栄養クリニック

妊娠・授乳期の食事と栄養

妊娠中から授乳期の栄養は、母体の健康と分娩・産褥の経過に大きな役割を果たしています。また胎児の健やかな発育のために必要なエネルギーと栄養素はすべて母体に依存しているため、適切な母体栄養が胎児・新生児期の良好な栄養状態を形づくる点で重要とされています。
 
妊娠中の体組成(からだを構成する4つの組成分、脂肪、筋肉、骨、水分)と基礎代謝(生命活動を維持するために必要な、最低限のエネルギーのこと)は妊娠週数とともに変化します。 
妊娠すると妊娠8週頃から母体の脂肪蓄積が始まります。胎児は妊娠20週を超えると成長速度が増加し、また胎盤・子宮・乳房などの組織も増え、さらに母体血漿量は妊娠中期から末期にかけて約50%増加します。そうして分娩時には全体として約12kgの増加量となります。
妊娠中の基礎代謝量は、妊娠初期には5%、妊娠後期には15-20%の増加します。この妊娠中の体組成と基礎代謝量の変化に伴い、妊婦のエネルギー必要量は、妊娠していない方と比べて必然的に多くなります。「日本人の食事摂取基準 2020年版」では、妊娠期別に付加量として示されており、1日あたり、妊娠初期では50kcal、妊娠中期では250kcal、妊娠後期では450kcalが同年世代の妊娠していない方より必要とされています。
 
妊娠期間中は手作り料理を心掛け、栄養のバランスを考えた食事をする必要があります。また、妊娠前とは違う点で注意することがあります。
魚介類は、良質なたんぱく質で、生活習慣病の予防や脳の発育等に効果があるといわれているEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸を多く含み、各種の微量栄養素の摂取源となります。しかし、一部の魚介類については、他と比較して水銀濃度が高いものも存在します。
メチル水銀は特に胎児の中枢神経の発達に影響を及ぼすとされています。妊婦や妊娠を予定されている方は、マグロ類(マグロ、カジキ)、サメ類、深海魚類、鯨類(鯨、イルカ)などメチル水銀濃度が高い水産物を主菜とする料理を週1回以内(週に50-100g程度以下)にすることが勧められています。
 
リステリア菌は食中毒のひとつで、妊娠中は健康な人の20倍リステリア菌に感染しやすいといわれています。感染した場合、流産・早産・死産や、赤ちゃんに髄膜炎や敗血症などのリステリア症を引き起こすことがあります。
加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンなど、冷蔵庫に長期間保存され、加熱せずにそのまま食べられる食品は、リステリア食中毒の原因となる可能性があります。食品は期限内に食べきるようにし、開封後は期限に関わらず早くに食べる、食べる前に十分加熱する、生野菜や果物などは食べる前によく洗う、などの対策で予防できます。
 
トキソプラズマ症は、病原性原虫により引き起こされる、典型的な人畜共通感染症の一種です。妊娠中に母体から胎児にも感染し、先天性トキソプラズマ症を発症することもあります。加熱処理の不十分な肉(馬刺、牛刺、鳥刺、レバ刺、レアステーキ)や、土や猫の糞に存在する原虫が口から入って感染します。
妊娠中に胎児が先天性トキソプラズマ症を発症すると、流産の原因となったり、胎児の眼や脳の発育に影響を与えたりします。食用肉はよく火を通して調理する、果物や野菜は食べる前によく洗う、ガーデニングや公園の砂場遊びの後は温水でよく手洗いをする、動物の糞尿の処理時には手袋を着用する、等で予防できます。
 
胎内サイトメガロウィルス(CMV)感染症は、乳幼児に神経学的後遺症を引き起こす可能性のある妊娠中のウィルス感染症です。約70%の成人女性は感染し抗体を持っていますが、母体への感染が初感染の場合には特に注意が必要です。
妊娠中のCMVの主な感染経路は、上のお子さんを含む周囲のお子さんです。乳幼児の尿や唾液に触れる際には手袋を着用し、触れた後の手洗いを十分に行い、また食べ物、飲み物はお子さんとは別にし、同じ箸やスプーンやフォークも使わない様にする必要があります。
 

食育

食育とは、明治時代の医師、薬剤師であった「石塚左玄」が作った言葉です。石塚は、「食」を通して病気を治療と予防を行う「石塚食療所」を故郷の福井県に開設し、活動したことで知られています。
 

現代においては新たな理念を加え、「食育基本法」という法律が2005年に成立しました。この法律では、「食育とは、生きるための基本的な知識であり、知識の教育、道徳教育、体育教育の基礎となるべきもの」、とされています。すなわち「食育」とは、人が生涯を通じて健全な食生活の実現や食文化の継承、健康の維持が図れるように、自分自身の食について考える習慣や、食に関する様々な知識と、食を選択する判断力を正しく身に付けるための学習等の取組みを指しています。これは、食に対する心構えや栄養学、伝統的な食文化、食ができるまでの生産過程についての総合的な教育のことです。
 

私たちはこの「食育」という理念を、妊娠、出産を通して身につけて頂きたいと考えます。それは、家庭のなかで「母親」は食をになう中心人物であるからです。母親の提供する食事や食に対する考え方は、次世代に受け継がれて行きます。妊娠期間中はこれまで身につけた「食」に関する考え方を見直す、大きなチャンスです。当院では、みらい助産院のキッチンルームで定期的に「妊婦さんのためのお料理教室」を開催し、妊娠期間中に積極的に管理栄養士と関わる機会を設けております。栄養学のプロである管理栄養士と接することで、食育の正しい知識と情報を得ることができ、保護者としての食育における役割が理解できるものと思います。
 

妊娠中の方

妊婦さん全員に妊娠12週で栄養相談を行います。妊娠中に必要な栄養(葉酸・ヘム鉄など)のとり方や食事や体質のチェックをして、体重の管理や気をつけたいことなどをアドバイスしていきます。妊娠中の体重管理はとても重要です。個々で異なりますが、体重が増えすぎるとお産が難産になったり、赤ちゃんが巨大児になったりします。反対に体重の増加量が少ないと低体重児が生まれたり、早産などのリスクが高まったりします。

当院ではフードスケール(院長特許取得済み)をお渡しして、妊娠中の体重増加が個別に分かるようしております。

 

フードスケール

 

20週で食物摂取頻度調査(DHQ-BOX)を行い、食事の栄養バランスをみます。24週でその検査結果を返却し、アドバイスをします。貧血や便秘など妊娠中の悩みにもお応えしております。より良い食生活を考えるきっかけになればと思います。

また、体重管理アプリが出ましたので、ご利用ください。
 

個別対応

妊娠糖尿病・妊娠高血圧・そのほかの持病など、気になる症状がある方は、個別にサポートしていきます。
入院中にも管理栄養士がメニューのチェックや病室での食事の相談などに応じております。
 

糖尿病に関する講演

2018/10/21(日)に「CDE-chibaフェスティバル2018」にて、
「当院における妊娠糖尿病の管理と食育」というテーマで当院の管理栄養士が講演を行いました。

新型コロナウイルス感染症対策読本【免疫と食事療法】

【免疫の仕組み】
体には、ウイルスや細菌を侵入させないための「防御機構」と、 侵入したウイルスや
細菌を排除するための「攻撃機構」という2段階の免疫の仕組みが備わっています。
 

第1段階の防御機構は「粘膜免疫」です。日々の生活で、体内にはウイルスや細菌、花
粉などの異物が絶えず侵入しようとします。これらの異物を侵入させないように私たちの
体を守っているのが粘膜免疫です。
 
粘膜免疫が働く場所は、目、鼻、口、腸管などの粘膜です。ここで異物が粘膜を介して
体内に入るのを防ぎ、体外に出してしまうことで感染を防御します。
第2段階の攻撃機構は「全身免疫」です。病原体が「粘膜免疫」を突破して体内に侵入
し、増殖してしまった状態を感染といいます。体内に侵入したウイルスや細菌に対して、
第2段階の全身免疫が働きます。全身免疫のシステムでは、免疫細胞が病原体を捕えて、
排除するよう働きます。
 
全身免疫には、免疫細胞が直ちに相手を捕えて攻撃する「自然免疫」と、相手の性質を
正確に見極めて攻撃する「獲得免疫」の2種類があります。
体内では古い細胞が新しい細胞に入れ替わるために細胞分裂が起こっていますが、細胞
分裂の際、異常な細胞が発生することがあります。この異常な細胞が増殖した状態が「が
ん」です。このように体内で生まれたがん細胞のような異物を攻撃するのも、全身免疫の
役割です。
…続きは、こちらからご覧いただけます。

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