【月経異常】月経困難症・月経前症候群(PMS)・過多月経・無月経

「月経」・「生理」とは

「月経」と「生理」は同じことをさし、医学的な用語で「月経」と言っています。
「月経」は「周期的に起こる子宮からの出血」です。子宮の左右にある卵巣から卵子が排出される(排卵)と、子宮の内膜が厚くなって受精卵が着床しやすいようにふかふかになります。
しかし受精せず妊娠とならない場合は、これ以上子宮の内膜を育てる必要がないため子宮内膜がはがれて血液とともに外に排出されます。これが月経(生理)です。
そして次の排卵・着床の準備が始まり、月経が周期的にやってくるのです。
 
 
月経周期(生理周期)
月経周期とは、月経第1日目から次の月経第1日目の前日までの日数を示します       
正常範囲の月経周期は25-38日で、月経血が続く日数は3-7日が正常範囲です。
排卵から月経の始まりまでの期間は皆14日です。月経が始まってから次の排卵までは人によって日数が異なります。まずは自分の周期を知っておきましょう。

※初経年齢は10-14歳、閉経年齢は43-54歳です。

月経困難症

月経の開始に伴って起こる病的な状態を言います。およそ4~5人に1人はなんらかの月経痛に悩んでいると言われています。下腹部・腰痛などの一般的に生理痛と呼ばれる症状、頭痛、悪心、嘔吐などの症状を伴い、月経終了後に症状がなくなったり、または軽減するものを月経困難症といいます。また、排卵を伴わない月経時には、月経痛は起こりづらいと考えられています。月経困難症は、その原因により以下の2つに分類されます。
 
1、機能性月経困難症
原因となる疾患がなく、初経後(初めての生理の後)1〜2年から始まることが多いと言われており、ほとんどの月経困難症がこれにあたります。
 
2、器質性月経困難症
病気が原因となって引き起こされるもので、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線筋症、子宮や卵巣の炎症、子宮後屈症、子宮奇形などが原因となります。
 

月経前症候群(PMS)

月経前の期間に、体や心の不調を感じることはありませんか? 
その症状や出方は人によって様々ですが、身体的症状として、乳房の張りや痛み、倦怠感、肌荒れ・にきび、食欲不振・過多、眠気・不眠、頭痛、腰痛、乳房の張りやお腹の張り、むくみなどがあります。また、精神的症状として、イライラ、憂鬱な気分になる、落ち着かない、情緒不安定になる、身近な人に八つ当たりしてしまう、集中できないなどがあげられます。
これらのような心身の不調が、月経前3~10日の間に続き、月経の開始とともに軽くなったり、症状がなくなったりするのが月経前症候群(PMS)と言います。
もし、日常生活に支障をきたしたり、辛かったりするようであれば、我慢せず早めにご相談ください。
 
<治療>
症状を伺い、PMSであるかどうか診断・検査した上で、症状に合わせて漢方薬や鎮痛剤、ホルモン療法などの提案をさせていただきます。
症状の日記をつけて、自分の病状を理解し把握することで対処しやすくなります。そして、症状や期間を自覚することで、気持ちが楽になって症状が落ち着く場合や、生活習慣の見直しや運動を始めたりすることで症状が軽くなることもあります。
必ずしも薬物療法が必要とは限りませんので、ご相談だけでもご来院ください。
 
無月経・月経不順・過多月経
月経周期が25日未満で出血が繰り返される場合を頻発月経、月経周期が39日以上3か月以内のものを希発月経、3か月以上月経がないものを無月経といいます。月経周期や月経血量、月経期間からみて正常な月経とは異なる出血である場合を機能性子宮出血といいます。
頻発月経は、初経から間もない時期や閉経前に見られ、排卵の有無により卵胞期の短縮、黄体期の短縮(黄体機能不全)、および無排卵周期症などがあります。
希発月経は、無排卵周期症や卵胞の成熟が遅れることで卵胞期が長くなってしまうことが原因です。また14歳以降になっても初経がない場合を原発性無月経、43歳以前に閉経となってしまう場合を早発閉経と言い、卵巣本体や卵巣に指令を送る脳下垂体の機能に問題がある場合や子宮卵巣に形態的な問題がある場合などが考えられます。
 

月経周期には、脳の視床下部から分泌されるGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)、脳下垂体から分泌されるLH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)と、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)などのホルモンが関与します。これら視床下部−脳下垂体−卵巣系のシステムを制御し、安定を図る仕組みを「フィードバック機構」と呼び、システムの恒常性を維持するため、正と負のフィードバック機構により、これらのホルモン分泌は巧妙にコントロールされています。
月経異常は、この視床下部-脳下垂体-卵巣系において、内部および外部からの影響でそれぞれの組織の働きに不具合が生じ、ホルモン分泌が正常に行われなくなることで起こります。急速かつ大幅な体重減少のストレスに伴う「体重減少性無月経」や精神的ストレス後の無月経は、ストレスが視床下部の機能に影響を与える機能性視床下部性無月経といわれています。
また不規則な生活や、糖尿病や甲状腺疾患などの病気が原因になることもあります。
 

<検査の必要性>
月経異常の原因検索のためには、まずLH、FSH、エストロゲン、プロゲステロンなどのホルモン測定を行います。これらのホルモンは月経周期の中で変化しながら分泌されますので、検査を行う時期が重要です。LHとFSHは月経7日目までの初期値として、エストロゲンは初期値と排卵時卵胞期のピーク値として、プロゲステロンは排卵後7日目頃の黄体期のピーク値として評価を行います。
ホルモン分泌異常が発見された場合、原因が視床下部-脳下垂体-卵巣系のどの部位にあるかを知るため、Pテスト(プロゲスチン投与)とEPテスト(エストロゲンとプロゲスチン投与)を行います。
Pテストで消退出血陽性の場合は第1度無月経、EPテストで消退出血陽性の場合は第2度無月経といいます。第1度無月経は軽度の視床下部障害と診断され、第2度無月経は視床下部-脳下垂体-卵巣系の高度な異常で、FSH値で視床下部障害型か脳下垂体障害型かの鑑別のため、負荷試験(LH-RHテスト)を行います。この試験はゴナドトロピン放出ホルモンを注射し、時間毎のLHとFSHの分泌反応性を評価します。
また視床下部-脳下垂体-卵巣系のシステムに影響を与えるホルモンとして、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、FT3・FT4(甲状腺モルモン)やPRL(プロラクチン:乳汁漏出ホルモン)、インスリンなどがあり、これらの評価と、必要に応じてTRHテスト(プロラクチン分泌能を調べる)やHOMA指数(インスリン抵抗性を調べる)などの負荷試験を行う場合もあります。
また、過多月経の場合にはホルモン異常の他に、器質性疾患の有無や貧血についても検査が必要です。器質性疾患の主なものに、子宮筋腫・子宮線筋症・子宮内膜症などがあります。
 

<治療>
治療はホルモン療法が主体となります。
第1度無月経でエストロゲンが30pg/mL以上ある場合は、ホルムストローム療法を行います。この治療では、月経周期15日目からプロゲスチン製剤を10日間内服すると、内服終了後4日目から消退性出血を認めます。
第1度無月経でエストロゲンが30pg/mL未満の場合や、第2度無月経では、カウフマン療法を行います。この治療では、月経周期の前半でエストロゲン製剤を10日間、後半でエストロゲンとプロゲスチン製剤を10日間内服します。内服終了後4日目から消退性出血を認めます。カウフマン療法中は下垂体機能が抑制され、カウフマン療法中止後には視床下部-下垂体の機能が活性化して、卵胞発育とそれに引き続いて排卵が誘発されると推測されます。このリバウンド現象によって、その後の自然排卵周期が期待されます。またカウフマン療法は、繰り返す不正性器出血や子宮発育不全、不妊治療中の子宮卵巣のコンディション作りの時にも用いられます。
ホルムストローム療法、カウフマン療法ともに3か月間で3回の治療を1クールとし、その後1-2か月間の休薬期間を設け、月経周期が正常に戻ったかどうかを判定します。休薬期間中に月経異常が改善していなかった場合は、再度治療を繰り返します。月経異常ためのホルモン療法の治療は、途中で止めることなく根気強く継続することが重要です。

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